02.ラムネ・ロシアン・ルーレット

 六月と言えば、雨。梅雨。ああなんてついてない季節。これじゃあ気分だけではなく何もかもが憂鬱になると言うもの。あたしは湿って外ハネになる髪の毛を押さえてトレーニングルームに入って行った。

「みんなーどう?今日のノルマ終わった?」

 なんて言うと、しれっとした表情の眉村が「あぁ」と言った(アンタの反応は何時も大して変化が無くて面白くないけどちゃんと返事をしてくれるからあたしはアンタが一方的に好きだよ!だってアンタは野球が恋人なんだもんねつーかこの場合、野球部皆がそう言えるかな!)

「なんかねー本校の近くの町内会だっけ?そこのおじーちゃんがコレ差し入れてくれたんだって。休憩、しよ?」
 っていうと真っ先に出てきたのは渡嘉敷、と阿久津。「なになにー」って言ってくる渡嘉敷は筋肉もっさりな所さえ目を瞑れば完璧女の子だった。お前、今度女装しねぇ?(って言ったら全力で嫌だって言われそう)
 わらわらと集まってきた人数を確認して、あたしは持ってきていた段ボール箱を床に置いてガムテープを豪快に剥がした。
 中に入っていたのは、瓶に入った昔ながらのラムネ。ちなみにパッケージはついていない。

「おっ、ラムネ。なんか懐かしくね?」
「ねー、懐かしい。小さい頃はよく飲んでたよー」

 真島さんに奢らせてたしね!練習終わった後とかに、つつつと真島さんに寄ってお願いって言えば大抵は奢ってくれた。

「早速飲んじゃおー「千種ー差し入れもう開けちゃったかしら?」
「さっき連絡来たんだけど、その中に一本だけ水が混じってるらしいわよ」
「え、ほんとですか泰造さん!ロシアンルーレットじゃん!」
「っていうのは冗談で。本当は一本だけそこの息子さんが思いっきり激しく降っちゃってるみたいなの」
「炭酸抜けてんじゃん、それ」

 まぁ、ロシアンルーレットに変わりはありません。
(じゃあ、誰が炭酸の抜けたラムネを飲むんだろう。飲んだら無理矢理言い包めて、一発芸でもして貰お)