夏が、直ぐそこまで来ていた。
サンサンと照りつける太陽に体力を奪われながら、一行は熊野を目指す。
「は~そろそろ休憩にしない?」
「兄上、また休憩ですか? 白龍だってあんなに小さいのに頑張って歩いているというのに」
疲れのせいか、若干猫背気味に歩く景時が言う。前を歩いていた白龍が、振り返る。「神子が頑張ってるから、私も頑張る!」「……きゃーん! 白龍ったら可愛い! 頑張って歩こうね! でも、無茶は駄目だから…あ、」暑さのせいで若干上気した頬の白龍を見た望美が暴走しかけると、突風が吹いた。
「ギャ、ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」「神子!」
「望美!?」「先輩!」
突風に足元を掬われた望美は、後ろの崖へ落ちて行った。年頃の女らしくない悲鳴には若干呆れながら(そう思いながら、の悲鳴もきっと女らしくない悲鳴なのだろう)崖の下へ視線をやった。「っ!」今まで感じた事もない何かが、目の前で起きていた。目を開けていられない程の光がの視界を覆う。「先輩どうかしました?」「ひかりが、」咄嗟に腕で目を隠す。
「……いや、大丈夫。少し太陽の光に当てられただけだ。(有川は、気付いていない。わたしだけなのか?)それよりも、望美と白龍が心配だ」
体の中に、力を感じた。
「無理はしないで下さい、先輩」
「大丈夫だ。あそこから、下へ行けるみたいだぞ」
足元に気をつけながら、望美と白龍を探しに崖下へと移動をする。そこげへ近づく度に、は何か理解出来ない力を感じるようになっていた。「(だが、これは何故か心地よいものだ)」何故、唐突に感じるようになったのか、その応えはすぐさま分かった。「皆!」望美の声がした。
望美の側には、見覚えのあるような、青年が立っていた。
「大丈夫か望美。誰だ貴様は、」
「あ、九郎さん、白龍ですよ。白龍」
「なに? 白龍は幼子だろう」
「いやー、なんか行き成りなんですけど、五行の力が溜まったみたいで。大きくなっちゃったんです。嬉しい半分、がっかり半分ですよ。ほんと」
「嘘コケ、がっかりの方が大きいだろう」
「あ、ばれちゃった? あの可愛い白龍に抱きつけないとなるとそりゃあもう残念で残念で仕方ないの」
「私は抱きついても平気だよ?」
「アカーン!!!! もうこれからは白龍も男部屋か…………ちっ、むさ苦しい」
「…望美、残念がるのは構わないが、そろそろ移動しないと野宿になるぞ」
「え、野宿は嫌です!」
「崖を上って、暫く歩くと、温泉のある宿がありますから、今日はそこに泊まりましょうか」
「よし! 、譲君! 行くよ! 温泉入るよ! 、朔、裸の付き合いするよ!」
「……最後のは大声で言うべきものじゃないぞ。望美、お前、女としてどうかと俺は思う」
「九郎殿、普段の望美はこんな感じだ。今まで多少の猫を被っていたみたいだが…温泉で我を忘れたようだ」
「そうなのか」