海神の方舟に乗って


02.呼ばれるのではない、呼ぶのだよ

02.呼ばれるのではない、呼ぶのだよ

「雨、」
「えぇ、雨ですね」

 ポツリと呟く景時に、柔和な笑みを浮かべたままそれに応える弁慶。降りましたね、と言う譲と安心したように息を吐く朔。それぞれの反応を見せながら、彼等は空を見上げる二人の功績者を見つめた。
 望美は訳が分からない表情をしていたが、は逆に恍惚とした表情を浮かべて空を見上げていた。

「の力が、」
「白龍、それってどういう事?」

 朔が白龍に尋ねる。白龍が言った事を簡単に解釈すると、望美に白龍の神子としての力が譲に八葉の力が発現したように。にも眠っていた力があったと言う。それは今の自分達になくてはならないもので。必ず自分達の助けになると言う。

「それで、その力とはなんですか?」
「うん。は四神の神子。神子を補助する存在。それが、さっき発現した」

「龍神の神子伝承より、真実味に欠けるものだとは思って少し疑っていましたが、四神の神子…ですか」
「弁慶、知っているのかい。俺も昔少しだけ調べた事あったんだけど、そんな残ってなかったんだよねぇ」

 譲の疑問に答える白龍に、少し見当違いな事を言う白龍。その後に、思い出したかのように弁慶が口を開いた。

「でしょうね。比叡にも僅かな書物しかありませんでしたから。でも、景時の方が僕よりも知っている情報は多いと思いますよ」
「え? そうなの」
「えぇ、僕の勘ですが」
「あ、そうなの」

 陰陽師と僧侶ですからね。
 弁慶が言う。

「四神の神子は、神子を補助する存在。だから、えっと…八葉と似ているようで、似ていない」
「俺達――春日先輩と俺――は役目があったから、この世界に来たんだって分かったけれど、先輩は俺達が巻き込んでしまったんじゃなかったんですね。(だったら兄さんも何か役目があるんだろうか)」


  • ←
  • □
  • →