海神の方舟に乗って


02.呼ばれるのではない、呼ぶのだよ

02.呼ばれるのではない、呼ぶのだよ

 下鴨神社。
 神泉苑よりも綺麗に咲いた桜が、満開に咲き乱れていた。
 そして、そこには見知った、覚えのある顔が大太刀を腰に下げて立っていた。記憶にまだ残っている声色で「よう」と手を上げた。

「――――……は? まさか将臣?」
「よう、元気そうだな」
「お前、何時の間に老けたんだ」
「それ直球過ぎて、俺凹む」
「わたしは事実を述べたまでだ。まぁ、此処でわたし達が問い詰めても理由を話すつもりはないんだろう。だから敢えて聞かない。だが、これだけは聞かせてくれ。あの時、怪我は無かったか?」
「あの時か? 切り傷だらけになったがな。取りあえずは元気だ」

「それで将臣君、これからどうするの?」
「あー……世話になった家に帰るつもりだったが…二、三日くらいならお前達に付き合ってやるさ」
「兄さん、それは勝手過ぎないか? 先輩が心配じゃないのか」
「俺が居なくても、お前とが居るだろ?」

「有川、噛み付く事はないだろう。将臣だってその、世話になった家に何もしないでわたし達に合流するなんて、それこそ勝手過ぎる事だろう。礼くらい言わす時間をやらないと、合流したくても出来ないだろう」

 、望美、譲と三人で将臣を囲って無事の確認をしていると、弁慶や朔が怪訝な表情で将臣を見ていた。その視線に気付いたは将臣を彼等に見えるように位置をずらして言った。

「弁慶殿、景時殿、朔。これは、有川の兄でわたし達と同級生の将臣だ。望美の幼馴染にあたる奴だ」
「これって、人をものみたいに言うな」
「じゃあ何と言って欲しかったんだ? このざんばらな落ち武者っぽい髪型の男?」
「あはは、それ確かに!」
「笑うな!」
「だったら髪の毛くらい切れ。身だしなみは最低限のマナーだ。どうせめんどくさがって放置してたらそこまで延びたんだろ?」
「………………」
「図星、」
「るせぇ」


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