望美は夢を見た。
あの日、離れ離れになってしまった幼馴染との夢を。その夢の中で彼は望美に懐中時計を渡した。そして、にと小さな箱を託した。――で逢おう。そこで、夢から覚めた。
「なんだったんだろう……」
布団から起きて、望美は先程まで見ていた夢を思い出す。やけに非現実的でかつリアルな夢だった。そこで、望美は両手に感覚に気付いた。それぞれの手の中にあるものは、夢で彼に託されたものと同じだったのだ。
「望美、そろそろ起きろ」
うっすらと額に汗を浮かべたが、手ぬぐいを肩にかけて室内に入って来た。そう、望美とは同じ部屋で寝ているのだ。何時もなら、が朝の鍛錬に起きて着替えている時に望美も目が覚めて二度寝に入るのだが、今日はそれが無かった。
「、夢を見た」
「今日はわたしが着替えていても起きてこなかったら、余程いい夢見だったんだなと思っていたんだけど」
「そうかもしれない。…将臣君にね、会ったの。それで、これ、クリスマスプレゼントにって貰っちゃった」
「懐中時計? それって本当に夢? 望美、わたしが気付かない間に布団から出てフラフラしたんじゃないのか」
「私は夢遊病じゃないよ。それで、これ、にって。なんだろ?」
望美はそう言ってにそれを見せた。シンプルにリボンだけでラッピングそれたそれはとても小さなもので。するするとリボンを取って中身を確認すると、ピアスが一組そこにはあった。
「ピアス?」
「そうみたい」
「あれ? って穴開けてたっけ?」
「コッソリ開けてた」
何時の間に、が穴を開けていて、それを将臣は知っていたのだろうか。そう、自分に内緒で。
「(って、何時の間にそんなに将臣君と仲良くなったんだろう…)」
「まぁ、開けた後顧問にバレて塞げって説教されたけど、なんとか誤魔化して…って、どうかしたのか?」
「ううん。何でもない。似合うよ、きっと」
「ならいいが…悩みがあるなら溜め込むなよ?」
「うん、ありがと」
「それじゃ、ご飯食べに行くか。有川が首を長くして待っている」
その様子が容易に描ける、と呟きながらは障子を開けた。居間に向かうと、既に望美と以外の面子が集合していた。皆と食事をする時間はあるのか、九郎の姿もあった。
「九郎殿、来られていたんだな。おはよう」
「あぁ、おはよう。景時に用があってな」
「朝から大変だな」
「そうでもないさ。これだ兄上のお役に立てるなら」
「……ブラコン」
「武羅棍?」
「無理やり漢字変換しなくていいから。ああ、意味は有川に聞いたらいい」
さり気には譲に全てを丸投げして、箸を手に取った。
今日も、一日が始まる。望美も箸を手に取った。