海神の方舟に乗って


02.呼ばれるのではない、呼ぶのだよ

02.呼ばれるのではない、呼ぶのだよ

「リズヴァーン?」

 何時ものように神泉苑から帰ってきた望美の頬は、赤くなっていた。それは運動をした後だからと言う理由だけでは無い様子で。に、その名前を言った。

「そう! 神泉苑で練習してたら、アドバイスをくれたの」
「へぇ。わたしも行けばよかったかも」
「そうだね。も、リズ先生にアドバイス貰ったら、直ぐに出来るよ!」

 そのリズ先生曰く、やっぱり望美には余計な力が入り過ぎているようで。以前、朔に教えて貰った舞を舞うように、風に身を任すように。ただ、断ち切るのではなく、感じるように。
 その興奮が冷めないうちに、と望美は庭に出て再び練習を始めた。

「あ、そう言えば望美知ってるか? 今度神泉苑で雨乞いの儀式があるらしい。たまにか気晴らしに出かけてみないか?」
「そう言えば、今九郎さんその準備で忙しいんだってね。この前朔に舞を教えてもらってから、少し気になってたし。うん、行ってみようか」
「だったら九郎殿に連絡しておかないとな」
「そうだね。弁慶さん辺りなら捕まえられると思うから、私も見つけたら言ってみるよ」
「弁慶殿じゃなくても、そこに居る景時殿に言えばいいじゃないか。こんにちは景時殿。今日も立派な洗濯日和だな」

 は廊下の向こうから洗濯籠を持って歩いて来た景時に声をかける。その中には、山盛り詰まれた洗濯物が無造作に盛られていた。

「手伝おうか? 景時殿」
「あ、いやいや。大丈夫~洗濯は俺の楽しみだから」
「ですよね。旦那でも無い野郎のふんどしを干すのも、気まずいですからね」
「…………うん、そうだね」
「あ、まさか入ってました? ふんどし」
「あはは………………」

 その後、に見えないようにコッソリと景時はふんどしを干した。


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