「巡れ、天の声!」
「響け、地の声!」
「「彼のものを、封ぜよ!!」」
望美の声に、女性の声が加わり、それは目に見えぬ力を増幅して、落ち武者に向けられた。そして、落ち武者は影も形も無く、消えていった。
「ハァ……ハァッ…なん、だったんですか……アレは」
「負の感情と嘆きの権化、怨霊よ。……やっぱり、望美、貴女が私の対なのね」
「そう、なの?」
「えぇ、そうよ。私の対、白龍の神子は貴女しか居ないわ」
「確認中ごめんなさい。貴女は、誰? あ、わたしは彼女、望美の友人の 。此方が後輩の有川 譲。どうしてこんな所に居るのかも、聞いていいかしら」
「私は梶原 朔。源氏軍に従軍していたのだけれど、怨霊の嘆きが強すぎて、逸れてしまったの」
「怨霊とはさっきの落ち武者の事ですよね? それは一体何ですか」
「人間ではない、悪しきもの。とでも言えばいいのかしら。説明しながら、移動しましょう。また怨霊に襲われでもしたら大変だわ。この先に、源氏軍が陣を引いている橘姫神社があるわ」
望美と女性――朔――が二人の世界を作ろうとした瞬簡に、が割り込む。
そして、返事に違和感を感じた。何故、源氏軍と言う言葉が出てきたのか。しかも、彼女は今なんと言ったか。従軍している、とはの聞き間違いかと一瞬思ったのだが、間違いではなかったようだ。朔は譲の質問に答えながら、前に進み出ながら移動を始めた。
コンクリートの無い、土の地面を歩きながら一行は固まって歩き始めた。
「(源氏、従軍…怨霊……わけの分からない事ばかり。もう少し、様子を見るしかないか)」
「、」
「ん? あぁ、望美? どうかしたのか」
「どうかしたって言うか、、その格好は? 後、さっきの戦い、なんか慣れてたね」
「それを言うなら望美だってその格好。てか、スカートは制服のままなんだ」
「うん。は袴みたいな格好。なんか格好良い。違和感もないし」
「そりゃ、普段から袴はいてたからか。でも見た感じ、これ袴と言うか水干みたいなんだよね」
「水干って男の格好ですけど、先輩似合ってますよね」
「有川、それはわたしが女らしくないという事か?」
「そんなっ」
「分かってるよ。袴と被るんだろう? それじゃ、仕方ないさ。髪だって上げてるし」
「は凛々しいから。私も、お姉様とか呼びたくなるくらい」
「はいはい、分かってる。だから今は変な世界にトリップしないで」
神社の、階段が見えてきた。