24.ポイント・オブ・ノーリターン(引き返し不能地点)
気が付くと、あたしは寝かされていた。
目を開けるとヤマトが見える。
「気分は如何ですか?」
「……あたま、いたい」
「そうですか」
「み、つるは?」
よく見ると、美鶴だけでは無い。三谷の姿も見えなかった。
ミーナがタオルを持って走ってくる。
あたしはミーナからタオルを受け取り額に乗せた。
「あの二人ならあそこに居る」
カッツがあれ、と指差しながら言った。
真っ直ぐに上に伸びたもの。
一番上が見えないくらい高い。
「、お前も行くのか?」
「……あたしは……」
夢か何かで先程みた両親たちの顔が蘇る。
彼等は、あたしのしたいようにやれと言った。
事件の事はいいから自分たちの分も幸せになりなさい、と。
「行くんだろう?下はわたし等に任せな」
「外傷は特にありません。追い付きたいのなら早く行きなさい」
「あたしたちは大丈夫だから。
―――無事で、帰って来て!」
あたしは追い風を作りながら駆け出した。
空へと続く坂を上がっていく。
ヒュンッ
頬に一筋の傷を作り、何かが掠めた。
そしてあたしの前には、あたしが居た。
何なんだ、そう思った瞬間もう一人のあたしは攻撃を始めていた。
風のシールドで防げるものは防ぐ。
だけどシールドはそう持たなかった。
あたしは緑の蔦を出してもう一人のあたしに巻き付ける。
もう一人のあたし、はそれを焔で焼き払った。
あたしはそれを見逃さず、すかさず水の竜巻を作った。
「ねぇ、本当はも幻界なんてどうでもいいんでしょ?」
「―――え?」
「芦川 美鶴だって、何とも無いんでしょう?」
「…何が言いたいのよ!」
あたしは思わず叫んでいた。
焔を出して、鞭のように長く。
に向かって投げた。
焔の鞭はに巻き付く。
チリチリと肌が焼けていく。
ニタリ、はそう笑う。
「こんな事してもいいの?あたしはなんだよ?」
がそう言うと、あたしの肌が焼け付くように痛くなった。
思わず焔を消して見る。
何にもしていないのに、火傷の痕が出来ていた。
「いい?あたしは、はあたしなの。あたしが傷付けばも傷付く。
さぁ、どうやってあたしを倒す?」
可愛らしい顔で、はあたしに言う。
白の宝玉の力を使い、は火傷を治した。
あたしも宝玉を使い、同じように傷を治す。
「………アンタが、あたし?」
「そ。あたしはあなた、あなたはあたしよ。
―――お遊びは此処まで、次は本気で行くよっ!」
はそう言うと身体を浮かせてこっちに来る。
青の宝玉の力で剣を作っていた。
あたしはシールドで受け止める。
水の剣が少し欠けた気がした。
「くっ…!」
「何時までもシールドで防いでいたら終わらないよ。早く決着をつけましょうよ!」
が握っている剣が、パキパキと言いながら氷になっていく。
青の宝玉の力は、こんな事も出来ると知った瞬間。
あたしは焔の鞭を腕に巻き付けていた。
焔はあたしの腕に巻き付いているのに、何故か熱くない。
あたしが出している、あたしの焔だからか。
不思議に思いながらあたしはシールドを解いてと距離を取った。
「水と焔とじゃ、焔負けちゃうよ?うふふっ、あたしの勝ちだね」
「誰が…アンタなんかに、負けるもんですかっ!」
あたしは今よりも焔を大きくして、と向き合う。
は更に、氷の温度を下げた。
服が所々破れている。
髪の毛もボロボロになっていた。
息も荒く、肩を大きく動かしてやっと呼吸が出来るくらいだ。
「しぶといよ、。さっさとあたしに倒されてよ」
「あたしは、負けない。アンタなんかに負けてたまるもんですかっ!」
あたしはそう言うと、に焔の鞭を投げた。
は鞭を避けるけれども、鞭はあたしの思い通りに動く。
やっとのことで鞭がを捕らえた時に、あたしは白の宝玉の力を使って自分の身体を守る。
焔が再びチリチリとの肌を焼いていく。
「白の宝玉の力を使っても無駄なんだよ。あたしが火傷を負うなら、も同じ場所に火傷を負う」
癒しの力で遅いが、あたしの身体もチリチリと焼け出した。
があたしの方に向かって歩いて来る。
あたしの目の前まで来ると、ニコリと笑った。
「ほら、も火傷が出て来た。痛い?ねぇ痛い?アハ赤くなってきたぁ」
がその火傷をなぞる。
何とも言えない痛み。
あたしは苦痛に顔を歪めた。
痕がミミズ腫れになって痛々しくなってくる。
それでもは痕を触ってくる。
「…!っ!」
「アハハ痛い?あたしも同じ痛みがあるんだよ〜」
「……………」
「暖かーい…ね、ね、あたしも暖かいでしょ?」
「……………」
はニコニコとあたしを触る。
火傷を爪で引っ掻く。
ジュクジュクとミミズ腫れから膿が出てくる。
「っ!!」
「痛い?やっぱり痛い?うふふ今の凄いイイ顔してる」
は子供みたいにミミズ腫れをえぐる。
あたしは立っていられなくなり、膝をついた。
|back|top|next|
急展開ですみません。もう殆どうろ覚えです(汗)