22.それが苦しいと彼らは気付き、否定する
どのくらい馬を走らせただろうか。
慣れない馬に乗ったお陰で、あたしはボロボロになってしまった。
そして日が暮れた頃、物見矢倉がある場所で一夜を明かす事にした。
「、ワタルがあそこに登ってるの。あたしたちも行きましょう!」
元気に跳びはねながらミーナが言った。
何だか自分がやけに年寄りクサいと思わずにはいられなかった。
あたしはミーナに手を引かれるがままに物見矢倉へと上る。
「ワタル!」
「あれ、ミーナに?どうしたの?」
「どうしたも何も、あたしたちは景色を見に来ただけ」
「それにワタルが居たからね。ワタル、寒くない?」
ミーナは三谷の隣に立つ。
三谷は毛布に包んでいた。
「僕はこれに包んでるから。ミーナこそ平気なの?」
「あたしはネ族だから平気よ…くちゅん!」
「平気じゃないよ。こっちおいで」
「え?」
「二人で包めば平気でしょ?」
「あらまお熱いお二人で。あたしの事忘れてないかしら?」
後ろで二人のやり取りを見るあたし。
三谷も隅におけないな。
あたし、普通に邪魔者じゃん。
「!違うよ!」
「だって、ねぇ?」
「からかわないでよっ。僕たちはそんなんじゃないよ………」
「はいはい…分かってるから」
あたしはそう言いながらてすりに腰をかける。
夜の風がマントをなびかせる。
三谷もミーナも未だ顔を紅潮させて。
それでも二人は離れない。
それじゃ、この二人は両想いかな。
三谷がそんなこと言う筈が無いし。
ミーナがそこまで積極的だとは思わないし。
どのくらいこうしていたのだろうか。
案外、少ししか経っていないかもしれないけれど。
「ワタルは…どうして幻界に旅をしに来たの?」
「……僕が幻界に来たのは……………やっぱり、願いを叶える為。
僕の家族、バラバラになっちゃって…僕は家族を取り戻したくて…」
ミーナが突発的に言った質問に三谷が答える。
聞いていくと、一日で家族がバラバラになったらしい。
あたしのバラバラとは違う。
気持ちがバラバラ。
そして父親は蒸発した。
だからトリアンカ魔病院で葉っぱを
「お父さん」
と言ったんだ。
出て行った父親を戻したくて。
葉っぱを父親に見せていたから。
「あたしはね、父親を探してサーカスに居るの。
……色々あってね、あたしはお父さんを探しているの。
見付かるなんて希望は薄いんだけどね」
「お父さんを探している?」
「うん。だからジョゾの時だって………
お父さんに会わしてくれるって言ったから、協力したの……」
「ぞうだったんだ………お父さんに、会えるといいね」
「ありがとうワタル。は、どうして?」
ミーナがあたしに話しを降ると、三谷もあたしを見た。
この事は前美鶴にも言ったし。
隠す事でも無いから話してもいいか。
「あたしは……………復讐、の為」
「え………復、讐?」
「六年前、家に殺人鬼が侵入してね。家族は殺されたけれど、未だ犯人は逃走中。
―――――だからあたしが、警察の変わりに犯人を懲らしめる」
あたしは拳を強く握りしめる。
そして二人には目を合わさずに、遠くの水平線を見詰めた。
「…ごめんなさい、。あたし……」
「悪気があったわけじゃないし、どうせ何時かは話す事。気にしないでいいから。
あたし、冷えたから戻るね」
下りようと梯子を見ると、カッツがそこに居た。
カッツは何も言わずに下り、あたしのスペースを取った。
あたしも無言で下りる。
下りると、何か言いたげな表情であたしを見る。
苦い顔だった。
「……復讐からは、何も生まれない。唯、虚しいだけだぞ」
「その復讐が、あたしの正義なの」
「後悔するぞ」
「しないよ。
―――邪魔、しないでね。したら赦さないから」
あたしは、そう言い残してテントに戻った。
痛いくらいの風が、通り過ぎた。
もう止めれない。止められない。
だってあたしは幻界に居る。
そして残る宝玉は一つだから。
ジョゾの角が取れた。
三谷がその取れた角を吹くと、何処からともなく父親ドラゴンがやって来て。
あたしたちは父親ドラゴンの背に乗って、海の向こうのイルダ帝国を目指していた。
そのスピードはすざましく。
あっという間にイルダ帝国についた。
帝国は何故か暗いオーラを放っていて。
あたしたちは羽ばたきで破った建物の中に入った。
そこら辺に硝子の破片が転がる床に立つ。
「芦川っ!芦川ぁ!!」
三谷が叫ぶ。
そして一人先に行ってしまった。
あたしたちは三谷を追い掛けた。
「ねぇ、本当にこの国に最後の宝玉はあるの?」
走りながらあたしは問う。
そういえば、とヤマトが口を開いた。
「確か、この城の地下に眠ると聞きましたね。
しかし宝玉は、この地に封印されている魔族を封じ込めるものです。
そして、宝玉を手に入れる前に、除いた人自身の一番嫌な過去を見せる鏡があると」
「なんでそんな詳しいんだよ」
「実はイルダ帝国出身だったり」
「あぁ、成る程…ってえぇえぇっ!!?」
以外だ。激しく以外だ。
ヤマトが北国の出だとは。
|back|top|next|