19.傲慢(ごうまん)な魔法使い
コンクリートっぽい壁がパラパラと崩れ落ちる。
「その木の葉がお前の父親か?」
美鶴が言った。
多分、幻術を見せられていたんだろうな。
三谷の瞳がはっきりし始めた。
「芦川??ど、どうして……?」
「どうしてって、三谷が騙されているらしいじゃん?
白髭爺に。アンチ白髭爺派としては助けようかなと思って」
「俺はお前に借りがあるから返しに来ただけだ。
あぁそこのお前、何を召喚しようとしたのか分からないが、あの魔法陣間違いだらけだ。
ちゃんと学校を卒業したのか?」
「なっ!
私に向かってそのような暴言を吐くとは……私を誰と心得ているのだ!」
「弱いくせにいっちょ前に吠えるもんなんだね。
『誰と心得ているのだ』
って言われてもねぇ……唯の雑魚としか認識していませんが、何か?」
その言葉に、美鶴も同意の相槌を打った。
三谷は唖然とした表情で、何が何だかという表情をしていた。
段々顔が赤くなってくる司教に、冷静なあたしたち。
これで戦おうってなったら司教は直ぐ負けちゃうね。
きっと回りが見えなくなるからさ。
司教が葉っぱで攻撃を始めた。
葉っぱは真っ直ぐあたしと美鶴に進んでくる。
あたしは鉄扇を取り出して広げた。
焔を出して葉っぱを燃やしていく。
チリチリといって葉っぱは灰になっていった。
「悪いけとそれ系統の術ではあたしを倒せないよ」
「こんなものか」
「貴様等っ私を侮辱するつもりかー!?」
司教が喚く。
みっともない事をしちゃって。
侮辱するもしないも、端からアンタは眼中に無いっつーの。
美鶴と三谷が口論を始めた。
三谷は生温いだとか、自分の願いと幻界とどっちが優先すべきだとか。
あたしはどっちかって言うと美鶴派だな。
幻界の平和を守る為に幻界に来たんじゃない。
あたしだって、願いを叶える為なら何だってしてみせる。
だから、三谷の考えは分からない。
あたしは復讐する為に旅をしているんだから。
幻界の住人と仲良くする為じゃない。
「俺は、願いを叶える為なら何だってしてみせる。
その為に来たんだから」
「それは違うよ、芦川っ!」
「違わないさ。
お前こそ、幻界の住人と仲良しごっこなんかして…幻界に何をしに来たんだ!?」
「それでもっ、僕は……っ!」
「うっ…五月蝿い五月蝿い、五月蝿いィ!!
一体何時まで口喧嘩してんのよっ!
男は拳で勝負だろうがぁ!!」
あたしはそう叫ぶと二人を殴った。
荒い息がやけに大きく聞こえる。
「…何を!」
「口喧嘩する暇があるのなら態度や行動で示してみなさいよ!
―――――あたしの言ってる事に、文句ある?」
「…ごめん、。
芦川、僕は僕なりの方法で、宝玉を集めて願いを叶えてみせるよ」
「……………俺は、これからイルダ帝国に行く。を、頼む」
喧嘩は治まった、んだろうか。
美鶴はエア・ラダーの魔法を使うと、天井から出て行った。
あたしと三谷は、それを見ている事しか出来なかった。
「キ・キーマとミーナを助けなきゃ!」
「あたしもリナに会いに行かなきゃ。
三谷、手出して。しっかり持っててよ」
そう言うな否や、あたしは風のボードを作り飛び乗った。
三谷を引っ張って飛んでいく。
外に三谷が乗って来た馬があったから三谷には馬に乗って貰った。
「何処に行くつもり!?」
「システィーナ聖堂!」
色んな隙間から、あたしたちは聖堂の内部に入って行った。
こんなある意味堂々と歩いているのに、見付からないのが不安だ。
しかもとてつもなく広い。
聖堂の司教や僧正姿が何処にも無いのが逆に違和感ありまくりだし。
あたしは少し下にある床に飛び降りた。
すると目の前には海らしきものと荷物を乗せた船。
これがリナが言っていた戦争をする為のもの。
「、何これ?」
「…イルダ帝国と手を組んで、戦争をする準備」
「え?」「これはこれは……」
「お若いハイランダー殿と殿、こんな所まで入って来るとは」
ダイモン司教が杖を光らせながら歩いて来た。
その後ろにはラウ僧正がついている。
「あたしたちには調べる義務があります。
失礼かと思いましたが、抜き打ちでやらせて頂きました」
「、君はハイランダーでは無いだろう?」
「ラウ僧正、あたしにはこのネックレスがあります。
100パーセントでは無いですが、あたしもハイランダーです」
「それで、何を調べに来たのですかな?殿」
「システィーナ聖堂の本当の姿」
ダイモン司教とラウ僧正が杖を光らせた時、大きな音と共にカッツが入って来た。
雑魚たちが一斉にハイランダーたちによって倒されていく。
ラウ僧正がハイランダーたちに杖を向けた。
「ラウ僧正!アンタの相手はあたしです!」
「!?」「?!」
「また会ったね、カッツ。
この腐れ外道はあたしの獲物だから。邪魔しないで」
「………分かった」
カッツは渋々頷いた。
扇を開いて、あたしは風を身に纏った。
|back|top|next|