15.ビニール袋の檻と金魚











「んっ………」



目を開けると此処はベッドで。
あたしは手足を縛られて転がっていた。
ベッドの柱と足のロープが繋がっていて。
あたしは上半身を起こした。



「っつ!」



ズキンと鳩尾が痛んだ。
辺りを見回すと、ベッドの側に女の人が座っていた。



「お目覚めかしら?何処か痛い所は無い?」



「……………貴女は?」



「私はリナ。貴女、もダイモン司教の口車に乗せられたようね」



「……………どういう、事?」



「ダイモン司教の考えは私には分からないけれど、これだけは言える。
 ダイモン司教は、私たちをイルダ帝国に連れて行くつもりよ」



「イルダ帝国……?」



「私たちは皆共通して、踊りをやっているわ。
 ダイモン司教を私たちをカモフラージュに利用して、戦争を起こす気なのよ」



「なんでそこまで知っているのに、逃げないの?」



「暴れた貴女なら分かるでしょう?
 外には魔法を使う僧正か司教が待機しているし、そこの窓には鉄剛子が嵌められていて、
 しかも此処は三階なのよ。当然、貴女の扇もあいつ等に取られたわ」



「あたしの扇っ!?!」



それじゃぁ、あたしは今唯の一般人じゃん。
あたしの扇は一体何処にあるんだ。


あたしは手首を縛っている紐を解こうをする。
でも解こうとする度に紐は食い込んできて。
正直かなり痛い状況に。



「もがけばもがく程、食い込んで苦しくなるわ。少しじっとして」



「あ、ありがとうリナさん」



「困った時はお互いさまよ。此処から逃げるには、貴女がキーパーソンだしね」



「あたしがキーパーソン?あ、あたし光って言うの。宜しく」



「宜しく。私の事はリナでいいからね」



リナはにっこりと微笑んだ。
同時に、あたしの手首の戒めが解けた。










足の紐も解いて、自由になった。
簡単にラジオ体操みたいな運動をする。
縛られていたから、なんか変だ。



「リナ、どうしてリナはダイモン司教の企みを知っているの?」



「……聞いてしまったからよ。ダイモン司教と、ラウ僧正の会話を」



「そう…なんだ」



「それから逃げようと何度か試みたわ。でも、逃げれなかった。

そんな時気を失ったがラウ僧正に横抱きにされて来たのよ」



「(横抱きって…マジ勘弁)

 リナは、何時から軟禁されているの?」



「七日前からよ。きっと家族は心配しているわ」



「いや、もしかしたらダイモン司教の元でなんたらかんたら……って言われているかもしれないよ」



見た感じ、やっぱしダイモン司教って強そうだしね。
何たって司教だし。


あんの白髭爺、拉致なんて犯罪すんなよな。
あーあ、美鶴心配してるよな。
あん時さっさと行っちゃったし。
こってり怒られるかもしれない。



「そうだね、の言う通りかもしれない。ダイモン司教の事だもの。
 それくらいしていたって可笑しくは無いわ」



「うん。ねぇリナ、あたし…早く出て行きたいの。
 白髭爺の陰謀でイルダ帝国に行くなんて以っての外」



「ふふっ…なら言うと思ったわ。
 は、現世から来た旅人なんでしょう?」



「なっ、なんで知ってるの?」



「ラウ僧正が扇を没収した時、宝玉が見えたもの。

 、取引をしましょう。私、宝玉がある場所を知っているわ。
 その場所を教える変わりに私も此処から出して頂戴」



「リナ本当?!」



「私、嘘はつかない主義なのよ。
 それに、現世からの旅人に嘘なんてつけないわ。
 知ってる?ある種族では現世からの旅人に出会うと良い事が起こると言われているわ。
 今回ばかりは、私もそれを信じてみようと思うの」



「あぁでもリナ、あたし扇が無いと……武器が無いと…」



「心配無いわ。
 が気を失っているのをいい事に、ラウ僧正が手を出そうとしたら凄い風が発生したのよ」



あたし、扇が無くても風を作れたのかな。
いや、あたしが風を操れるようになったのは、幻界に来てからだ。
とすると、慣れたからかな。


そういえばおためしの森で、ラウ導師さまがなんか言っていたっけ。
えぇと何だっけ。

「お主の特殊能力を考慮すると鉄扇が一番いい」

だったかな。
でもそういうニュアンスの言葉だった気がする。










あたしとリナはあれから直ぐに寝る事にした。
あたしが軟禁初日だったからリナが、

「寝た方がいい」

って言ってくれて。
あたしたちは女の子って事もあって、シングルベッドでも二人横になれた。
一人床に寝る事が無くて良かったよ。


この軟禁部屋にはなんとペットの出入口があった。
食事はこの小さなドアを開けて入れていた。
受け取りはリナ。
手足を縛られて動かないあたしが取りに行くのはマズいでしょ。


食事は携帯食料が多くて、乾燥してパリパリした。
顎の筋肉には宜しい食べ物なんだろうけどさ、ちゃんとしたもの食わせろや。
好い加減飽きてきた携帯食料。
ユナ婆のご飯が恋しいや。
ユナ婆のだったら携帯食料でもオッケー。
ユナ婆のは美味しかったしね。



「携帯食料にも飽きたわ」



「あたしも、こんな乾燥したパリパリなの、一口で飽きた」



「旅をしている人はこの携帯食料が主流なんだけど?」



「とある食堂のおばちゃんが作ってくれた携帯食料だからさ、あたしこんなマズいの食べたの初めてだよ」



あたしはそう言って水を飲んだ。
水で流し込む作戦を使うしかないよコレ。










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