14.サンクチュアリ・モノマニア(聖域偏執狂)











ラウ僧正に通された部屋で、あたしは一人寛ぐ。
多分時間になれば呼んでくれるんだろうよ。
あたしは鏡を見る。



「にしても遅いよなぁラウ僧正」



あたしは傍らにある時計を見る。
もう準備も出来てるし。
好い加減呼びに来てもいいんだけどな。


外は既に真っ暗になっていて。
あたしも流石にこんな時間になるまで待たされるのはちょっとなー。
もしかしたら美鶴、心配しているかもしれないし。


あたしはドアを開けようとノブを動かした。
ガチャガチャ。
ノブは回るけれど、前後に動かない。
虚しくガチャガチャと鳴るだけ。



「え、ちょ!開けてよっ!」



あたしは力の限りドアを前後に引っ張る。
けれどもドアはびくともしない。
ドアを叩いてみた。



「ねぇ!開けて!開けてよっ!

 ラウ僧正!ラウ僧正!!」



殿どうかいたしましたか?」



「ラウ僧正!?あたしを此処から出して下さい!」



「あぁそれは出来ません」



さらっと言っちゃったよこの人。
ってか返事早いな!
もしかして張っているとかか?


犯罪じゃないの?
いや、流石ダイモン司教、だね。
自分が治めているからってやりたい放題じゃんか。



「出して!出さないとドアぶち壊すから!!」



「勇ましいお嬢さんですね。私は好きですよ、貴女みいな方は」



「生憎とあたしは、ロリコンの相手をする趣味はこれっぽっちも無いからっ!」



「嫌ですねぇ、貴女…が此処に居る限りは相手をして頂きますよ」



「阿呆か!ちょっとアンタ何考えてんだよ!この変態っ!!」



ガタッ、頭に血が上りあたしはドアを蹴っていた。
少しだけ、メシとかミシッとかいってくれたら嬉しかったんだけど。


もしかしなくても、あたし軟禁されたな。
取り敢えず逃げなきゃ。
ドアが駄目なら窓はどうだろうか。


走って窓を見に行く。
ガタガタと五月蝿い音を立てながら、一生懸命に窓の蝶ネジを回す。



「―――え?高っ!しかも下は海……」



「この部屋から逃げようなんて考えは諦めなさい」



「っ!ラウ僧正!一体これはどういう事でしょうか?」



「おや、ダイモン司教から聞いておりませんか?
 ダイモン司教は、日々働いている我々僧正の娯楽の為にを呼んだのでしょう?
 それが分かっているからは礼拝堂まで来たのですし」



「あたしは軟禁されに来たんじゃない!」



…我々僧正もやはり男ですし……」



「アンタが男なのは見りゃ分かるわボケっ!あたしは、踊りに来たんだ!」



「私の腕の中で、踊って頂きますよ」



「?
 アンタの腕の中でなんか無理に決まってんだろ!」



あたしはそう言うと、鉄扇を出した。
少しだけ広げる。
扇の回りに風が集まり始めた。
風の玉を作ると、ラウ僧正に向けて放った。


メキッといって壁が凹んだ。
ラウ僧正は避けた。



「仕方無いですね。

 のような子供に手を出すのは嫌なのですが……」



ラウ僧正はそう言うと、素早く杖を構えて魔法を放った。
その瞬間、あたしの回りに葉っぱが現れた。
風で吹き飛ばそうとしても、それはびくともしなくて。


ならば焔で焼けば。
扇の赤の宝玉がった。










====================










がダイモン司教のシスティーナ聖堂に行ってから随分経った。
もう帰って来てもいい頃なんだが。
が帰って来ない。


俺も集めた情報を言おうとしてたんだけど。
の奴さっさと行っちゃったし。
何かあったんだろうか。



「寒いだろう、そろそろ中に入らないのかい?」



「いえ、人を待っているんで」



「あぁ、一緒に部屋を取ったお嬢ちゃんかい?
 そういやまだ帰って来て無いねぇ…
 女の子がこんな時間に出歩くのは良くない」



「アイツ…は、ダイモン司教の所に踊りを見せに行ったんですが」



「ダイモン司教の所にかい!?ちょっと、中に入りな!」



宿の主人が俺を引っ張って中に入る。
俺は床に滑って転びそうになった。
何とか堪えたけれど。


主人はそんな俺を気にも止めずに奥へ歩いていく。
一番奥のドアを開けて、中に入った。
俺が入ると、主人は鍵をかけた。



「何をするんだ?」「何日か前の話だ」



「ある家の女の子が、ダイモン司教のシスティーナ聖堂に行くと行ったきり帰って来なかった」



「それととどう関係があるんだ?」



「確かその女の子は、焦げ茶と赤茶が入った黒に近い髪の色をしていて、
 それなりにスタイルはいい。そして女の子は踊りの勉強をしていた」



「………も黒だが、赤茶っぽい髪の色だ。(旅人だが)一応踊り子だ(格好をしているし)。
 それがどうか……もしかして、もその女の子と同じ目に遭ったと?」



「そう考えてもいい筈だ。最近はこの街も物騒になってね」



主人の言葉に、俺はドアに向かった。
あの時、俺もついて行けば良かった。


後悔の波が俺を襲った。


カギを開けて出ようとすると、主人に止められた。
主人は険しい表情をしていて。
首を横に振った。










backtopnext