12.彼女が祈る日曜日
朝。
起きると、直ぐ側に美鶴が居た。
なんで美鶴が居るんだ、と思ったらそうだ、あたしが連れ込んだんだ。
それで一緒に寝て。
だから、そうか、美鶴が居るんだ。
あたしは美鶴が起きないように静かにベッドから降りた。
ペタペタと裸足で床を歩く。
素足と床が、気持ち良かった。
「んっ……」
起こしちゃったかな、と思ったら寝返りをうっただけだった。
やっぱり美鶴、綺麗だから寝顔も綺麗だ。
あ、睫毛長ーい。
肌も凄い綺麗だし。
ちょっと触りたいかも。
髪の毛も一本一本が細いし。
何より痛んでいない。
あたしよりもいいかも。
「そんなに見られてると、起きれないんだけど」
寝起き特有の掠れた声で美鶴が言った。
あたしは慌ててベッドから飛び降りた。
美鶴がむくりと起き上がった。
そして欠伸を一つ。
たっぷり寝たと思うんだけど。
「のせいだから」
「えっ?ちょ、なんであたしのせいなのよ」
「が一緒に寝ようって言ったから、寝付け無かったんだ」
「そんなあたしのせいにされても。どうして、寝付け無かったのよ?」
「は一生かかっても分からないだろうよ」
「ムキーっ!何よそれぇ」
「本当の事だろう」
美鶴が顔を洗いながら言った。
仕返しに美鶴の濡れた顔にタオルを押し付けて、ガシガシと拭いてやった。
タオルを取ると、美鶴は鼻の頭を抑えた。
「痛いぞ」
「当たり前ですーっ、痛いようにやったんだから」
「何だよ……
あ、はこの後どうするんだ?」
「この後って?」
「メンフィスを出てからだ」
あたしはどうしようかと思いながら、地図を広げた。
美鶴は何処か宝玉のある場所に心辺りがあるんだろうか。
「特に、行く場所の目星は無いね。それがどうかした?」
「俺はリリスに行こうと思う」
「リリス?あぁ、此処か。大きいね」
「そう、情報集めもしやすいと思うんだ。も、どう?」
「でも待って、メンフィスからリリスまで凄い距離があるじゃん。
子供のあたしたちの足で、どれくらいかかるか分かってんの?」
「エア・ラダーの魔法を使う」
「エア・ラダー?」
「移動魔法だ。それなら、多少の疲労はあるが簡単に行けるからな」
「へぇ、あたしもそれやってみたい。エア・ラダーって定員一名とか?」
あたしが美鶴の腕を握ると、美鶴は杖で一回地面を叩いた。
足元に魔法陣が出ると、あたしたちは宙に浮いていた。
「きゃー!ジェットコースターみたーい!面白ーいっ!」
「馬鹿っはしゃぐな!落ちるぞ!」
「すみませんでした」
でも落ちそうで落ちないこのスリリング。
正直楽しい。
美鶴が支えてくれなかったら落ちるんだけどね。
「あ、悪いけど美鶴ー少しの間でいいからしっかりあたしを支えてて」
あたしはそう言うと、鉄扇を取り出した。
エア・ラダーって、身体を浮かせるんだから足の裏に小さな竜巻を作っているようなもんでしょ。
だったらあたしにも出来るかもしれない。
あたしは小さな竜巻を作る。
足が乗る程の大きさで。
隣で美鶴が息を飲むのが分かった。
「出来た。よし、せーのっ!」「、何をする気だ?」
あたしは片足を小さな竜巻に乗せた。
安定感は悪いが何とか乗れるものだった。
もう片方の足も乗せる。
風さえあれば、あたしは移動が出来たんだ。
ちょっと発見。
だけど今は美鶴のエア・ラダーの力を借りて。
「空を飛ぶって、こういう事なんだ。気持ちいいね」
「っ!何をするかと思えばそんな無謀な事を!」
「だって本来は一人乗りのエア・ラダーに二人が乗ってるんだよ。
足場も悪ければ安定感も無い。だから自分で作っただけだよ」
「だからって、落ちたらどうするんだ?」
「そんな事は無いよ、落ちそうになったら美鶴が支えてくれるんだし。
ね?」
当たり前のようにあたしは言う。
美鶴は額を抑えて呆れながら溜め息を吐いた。
気持ちコメカミがピクピクしているようだけど、気にしない。
美鶴に怒られた。
そりゃもうこってりと。
そこに正座しろ、みたいなノリで。
「ごめんって美鶴。何にも言わずにやったのは悪いと思ってるからさ」
「反省しているなら、いいさ。、宿を探すぞ」
「ねぇ!経費削減の為にさ、同じ部屋にしようよ。
ベッドはちゃんと二つある所かダブルベッドで!」
「っ!!」
「あははは、ちゃんと部屋は二つ取りますー」
何故か美鶴と追い掛けっこをするあたし。
すると先にはやけに豪華な船があった。
お偉いさんはやっぱり凄いと思った瞬間。
「あれは、ダイモン司教の船じゃないか」
「ダイモン司教って?」
「リリスを治めている司教だ。
あそこに居る、やけにヒゲが長い白髪の爺だ」
「あぁ、あそこに居る、あの裏がありそうな爺さんね」
「、ダイモン司教の事はは後だ。先ずは宿を取る」
美鶴はさっさと宿に入って行った。
慌ててあたしは美鶴について行った。
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