11.ダイジョウブ、ぼくはここにいる。
この位の仕返しはいいでしょ。
美鶴の腕にあたしの腕を絡ませて。
通りすがりの小母さんに、「可愛いカップルね」と言われた。
それによって更に顔を赤くさせる美鶴。
何時もクールが美鶴がこんなになるなんて。
可愛いな、と思った。
「、何処に連れて行くんだ」
「アンジェさんって人が経営するアクセサリーショップ!
教会に行く前に宿の小父さんから聞いたんだ。お勧めだ、って」
「だからって俺を連れて行く必要があるのか」
「たまにはいいじゃなん。あ、美鶴は宿もう取ってる?」
「いや、今朝ついたばかりだ」
「じゃあ、あたしが泊まってる部屋においで。今までの旅とか聞きたいし。ね、ね、ね?」
そう話している内にアンジェさんのショップについた。
そこには石を使ったアクセサリーが沢山並んでいて。
思わずうっとり眺めてしまう物ばかりだった。
元々ウィンドウショッピングのつもりだったけれど、何か邪魔にならない程度の物が欲しくなった。
胸元を飾るネックレス位なら、買ってもいいかな。
「いらっしゃい、可愛いカップルさん」
またカップルと間違われた。
恐らくこの人がアンジェさん、なんだろう。
赤に近い髪の毛を、ポニーテールにして。
丈が長いタンクトップを来て、下には半ズボン。
腰にはベルト変わりの紐を巻き付けている。
その紐や手首には、自身作であろうと思われるアクセサリーをつけている。
見た目は、カッツみたいなサバサバとした感じ。
「ん。この辺じゃ見掛けない顔だね」
「あ、あたしたち旅をしているんです!」
「へぇ、男の子は魔導士。女の子は踊り子、のようだね。奇妙な組み合わせだ。
でも私、君たちみたいな子供は嫌いじゃないよ。
中に入っておいで。いいものを見せてあげよう」
アンジェさんは、にこにこと笑いながら店の中に入って行った。
あたしたちも、アンジェさんに敵意は感じられなかったから続いて入った。
アンジェさんの店の奥に足を運ぶ。
まだ作りかけの商品が、転がっていた。
「石には、パワーがある。
持ち主に癒しの効果を与えたり、集中力を持続させたりするね」
「金運をアップさせたりするのもありますよね」
「それは、タイガーアイと言う石さ。他にも金運をアップさせるものがあるけど。
――石には、色んなパワーがある」
アンジェさんは茶色い石を見せる。
所々、黄色のような線が入っている。
綺麗な石だ。
「これがタイガーアイ」
アンジェさんは見せるだけでまた仕舞った。
あたしは、一つのブレスレットに目が行った。
丸いわっかに、一つだけついているアメジスト。
シンプル過ぎるけど、何故か目が離せ無かった。
「アメジストが好きなの?それはまだ作りかけなんだけど、失敗作だよ」
「え、失敗なんですか?」
「そう。気に入ったなら、あげるけど……ちょっと待ってて」
アンジェさんは何かを探し始めた。
美鶴は飽きたのか、店の商品を見て周り始めた。
「美鶴、何かいいのあった?」
「いや……見ているだけだ。こそ、いいのがあったのか?」
「さっきの、アメジストのブレスレット」
「失敗作の?」
「うん、何だか目が引き寄せられて……」
どうしてだろうね。
目が離せなくなるなんて。
「、こういうの好きなのか?」
「まぁあたしも一応、女の子だし。
でもこんなの買うお金が無かったから、ずっと見ているだけだった。
それにさ、買っちゃうと石の力に頼っちゃうし」
頼るのは、あんまり好きじゃないから。
元からあたしにはそんな環境無いんだけどね。
たまにカウンセラーの人は来ていたけど、相談なんてして無いし。
話しているとカウンセラーじゃないって分かっちゃったしね。
あたしは薄紫のリングを取ってみる。
綺麗な色をしている。
「はいはーい、お待たせー。
可愛い君たちにこれをあげよう、と思ってね」
アンジェさんが戻って来た。
手にはブレスレットとネックレスが握られている。
「君たちみたいな二人にあげようと決めていたから、お代は要らないよ」
そう言って。ネックレスをあたしに、ブレスレットを美鶴に渡した。
渡したというより、押し付けた、が適切な表現かもしれない。
宿に戻って、美鶴から色んな話しを聞いた。
現世での話も、少し聞いた。
「じゃあ、美鶴には妹が居たんだ。美鶴の妹なら凄く可愛いんだろうな」
「あぁ」
「でもなんで、話してくれるの?
妹さんの話してる時の美鶴、とても苦しそうで、辛そうで、泣きそうなんだよ」
「……え」
「でも全部、我慢してるの。
ねぇ美鶴、泣きたい時には、泣いてもいいんだよ?」
「それは…そっくりそのまま返すよ」
「あはっ!返されちゃった!」
あたしは笑って返した。
でも、心で泣いていた。
美鶴の過去を知っても、あたしは大して驚かなかった。
世の中には、あたしみたいに家族を失った人が居るんだ。
あたしは、美鶴に惹かれていた。
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