08.救世主は死に至る











大人の足では一日で行けるが、生憎とあたしは子供。
二日かけて歩き、メンフィスの街についた。


真っ先に宿を取って、街へ出ていく。



「この街に宝玉があると聞いて来たんですが、何か知りませんか?」



「宝玉?あんた、旅人かい?」



「えぇ、まぁそうですけど」



何故か目を輝かせながらあたしを見る店主A。
何だろう、と思っていると、突然手を掴まれた。



「そうかいそうかい、旅人と会えるなんて嬉しいねぇ。わたしに答えれる事なら全部答えよう」



「あの…宝玉について尋ねたい、と言いましたが」



「宝玉かい?それなら街の奥にある教会の導師さまがよく知っているだろうよ。

 ただな、此処だけの話なんだが………」



店主は声を小さくして、あたしに耳を近付けろというジェスチャーをした。
あたしは上半身を前に持って行き、店主に耳を向けた。



「導師さまは、何者かに殺されたらしい」



「え?」



「今、教会は僧正さまが仕切っているんだ。
 どうやら、僧正さまが導師さまの何かが欲しくて殺したらしい」



「何故貴方がそれを知っているのですか?」



「皆知っている事さ。だが誰も言わない。言えないんだ」



「……教会は、奥にあるんですよね?」



「いや、教会には行かないほうが…」



「ありがとう店主さん」



あたしはお礼を言って、果物を一つ買った。
街の奥にそびえ立つ、高い建物目指して歩いた。


カッツから貰ったネックレスは、使わない方がいいだろうな。
ならば芸者として。
風と焔、緑の力があれば十分にごまかす事が出来る。


初めて、この服装で良かったかもなんて思っちゃった。
旅人なんて言わず、旅をしている芸者の設定で行こう。
芸者と言っても踊りだけ。
児童ポルノに引っ掛かるような事はしない。
あぁ、なんか既にこの格好が引っ掛かってそうだけど。
まぁ、気にしない事にしようか。










僧正が、やけにニヤニヤしながらあたしを中に入れた。

「此処はウン百年に何とか導師さまが…」

とか言いながら奥に進んで行く。


あたし別に聞きたく無いんだけど。
でも、これを聞いて何かと都合が良くなるなら。
我慢して聞こうか。



「―――――なのです。
 何か分からない所等、ありましたでしょうか?」



「いいえ、とても分かりやすい説明で…ありがとうございます」



取り敢えず愛想笑いを一つ、僧正にしておいた。
僧正は満足そうな笑みを浮かべた。


チラリと回りの置物を見てみると、何だか怪しげな置物が沢山並べられていた。
なんて悪趣味な物。
人の趣味嗜好にとやかく言う必要は無いんだけれど。
あまりにも悪趣味過ぎて何も言えれないや。



「聞く所によると、貴女は旅をしているようですね」



「えぇ、旅をしながら踊りを皆さま方にお見せしております」



「だからお若いのにこんなにも大人びているのですね」



「いぇ……」



褒められて恥じらう振りをする。
てかこの僧正、何考えているんだ。
何をしたいんだろうか。


あたしは宝玉の事を聞きたいんだけど。
一体何時になったら話してくれるんだろうか。


暇だな。
こうなるんだったら三谷たちについて行けば良かったかな。
でもそうすると宝玉集めに時間かかるし。
此処は敢えて避けた方が良かったのかもしれない。



「えっと…貴女のお名前は……」



、と申します」



、さんですか。
 可愛い名前ですね。あぁ、勿論貴女自身も可愛いですよ」



―――何が言いたいんだコイツは



「あ、ありがとう…ございます」



「失礼、話し込んでしまいましたね……。
 どうでしょう、お茶でもしませんか?」



「そうですね………
 そういえば、この教会には現世から来た旅人が集める、と言われている宝玉があると聞いたんですが」



「宝玉に興味があるんですか?」



「そうですね。旅をしているせいか、そう言ったお宝を目にしていたので気になって」



「そうですか。
 残念ながら宝玉は教会の地下礼拝堂に奉られているのでお見せする事が出来ないのですが……
 清んだ青の宝玉でして。非常に綺麗な色を放っています」










どうやら、宝玉は本当にあるらしい。
ただ、この街を襲う水害の被害を止める為に地下に奉られているとの事。


けれども後で宿の店主に聞いてみるとこの街に水害の被害は無いと言う。
僧正が嘘をついている、と言う事か。
それにしてもあの僧正、何かって言うとあたしの無い胸とかを見やがって。
アンタはロリコンかっつーの。



「にしてもなんか気になるなぁ………教会の地下」



何が隠されているんだろうか。
今度探ってみよう。
カッツに聞けば分かるかな。
あ、でも連絡先知らないや。
いっか、別に。


あたしは、鉄扇の手入れをする為に扇を広げた。
赤の宝玉、緑の宝玉が埋まっている。
青の宝玉が、もう直ぐ入るんだ。
楽しみだ。


緩んだ顔を引き締めて、風の力を使った。
教会の方の窓を全開にして、聞き耳を立てる。


何かが燃えている臭いが、風で運んで来た。










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ヴィジョンに教会があるなんて知らないけれど、神父ではなく、導師さまが神の教えを伝えていた、という設定で。