07.彼女を苦しませないで、かみさま。











三谷があたしの前に立った。
腕を広げて犯人たちを隠す。



「駄目だよっ!これ以上やったら死んじゃうよ」



「これ位では死なないよ」



「僕は、犯人たちをカッツさんたちハイランダーの居る所に連れて行くんだ」



三谷が言うと、湖に異変が起きた。
水の底から何かが浮いてくる。


犯人たちが水の中へ連れて行かれる。
三谷も犯人たちを助けようと湖に入って行った。



!ワタルがっ!」



「自分から入って行ったんだから、何とかするでしょう。
 キ・キーマ心配なら行けば?」



「はっ!

 そういやオレは水人族……待ってろよワタルー」



「あ、ほんとに行っちゃった」



きっと三谷は聞いていないだろう。
「ワタルー」と叫んでキ・キーマは湖に潜って行った。


あたしは風の力で身体を浮かして、湖の上に立った。
水中でキ・キーマが三谷と猫みたいな女の子を抱えて上がって来た。
浅瀬まで二人を引っ張って行く。
二人は少し咳込みながらも、自分の力で立った。



「あれ?剣が無い?!」



三谷は腰まわりを探る。
水中で落としたのだろう。
慌てて広いに水の中へ戻って行った。


まぁ三谷ならキ・キーマが居るから大丈夫だろう。
あたしは猫みたいな女の子に近付いた。
焔を出して彼女にあてる。



「風邪を引く。火傷をしない位に下げているから平気」



「あ、ありがとう!あたし、ネ族のミーナ!」



 で構わないから。
 そろそろ乾いたかな?」



「うん、ありがとう!」



あたしとミーナは、湖の端っこに移動した。










三谷が宝玉を得た。
そしてハイランダー隊長のカッツから、ハイランダーの称号を貰った。



。また会ったな」



「まさかもう一度此処に来るとは思わなかったわ」



「報告によると、賊はが捕まえて、ワタルは湖の怪物を倒したとか?」



あたしはどっちでも良かったけれど。
否定しても良かったけど、取り敢えず肯定の頷くをした。


カッツは三谷のハイランダーの腕輪同様、用意してあった箱を取り出した。
中にある物を取り出して、あたしの前に見せる。



「このネックレスを見せれば、たいていの施設には入れる。
 わたしたちハイランダーからのささやかな礼だ。

 受け取ってくれないか?」



「…断る理由が無い。
 何処でも立ち入る事が出来るんだもの。
 寧ろ感謝する。ありがとう」



あたしはネックレスを受け取って、首にかけた。
そして、胸当ての中に仕舞った。



「所で、この様子だともう一日街に滞在してもらう事になるが、宿は取ってあるのか?」



「いいや、宿は元々取っていない。
 今日中には街を出ようと思っていたんだ」



「ならばわたしの部屋に来るか?
 わたしも現世の話を聞きたいんでな」



「……カッツがいいのなら。
 あたしの現世での生活なんて、人に聞かせるもんじゃないけど」



寧ろ聞かせるなら三谷の方が。
あ、そうか。
三谷にはキ・キーマが居るからか。
あたしは一人だし。
宿泊費が浮くから別に構わないけど。


まぁ、あたし人に言える生活じゃないけどね。


あたしと三谷は、このハイランダーの館で別れた。
カッツの後に続いて、館の奥に移動する。


カッツの部屋で、あたしは三日振りのベットで寝た。
ゴツゴツした地面や、むしむしする藁の上よりも、快適に寝る事が出来た。


そう言えば寝る前に、あたしが現世の生活を言うと、カッツはあたしの頭を撫でた。

「よく今まで頑張った」

と言いながら。










次の日。
ハイランダーの人たちに見送られて街を出た。
街を出る前にどの街に行こうか考えていると、

「メンフィスの街に宝玉があると聞いた」

と言って教えてくれた。


ならば次の行き先は決まったようなもの。
第三の宝玉を求めて、メンフィスの街へ。
道を教えて貰いながら、地図を見る。
此処からそう大して遠くない場所にメンフィスの街はあった。



「此処まででいいです。見送り、ありがとうございました」



「あぁ、元気でな」



「では」



お辞儀を一つすると、彼は敬礼らしいポーズをとった。
三谷たちも、カッツに見送られて街を出た頃だろう。
彼等のパーティーには、ネ族のミーナが加わったとか。


三谷には、何処か人を引き付ける所があるからな。
素直に人を信用したり、それは疑う、事を知らなくて。
そう、彼は例えるならばりなんだ。


だからあたしは眩しく感じたんだ。
正攻法しか知らなそうな。
あたしみたいなのとは違う。
三谷は、美鶴とも違う。
三谷が白なら美鶴は黒だもの。


じゃあ、あたしは―――。
きっと黒よりも深い漆黒、なんだろうな。


太陽がそろそろ真上に差し掛かろうとする時。
昼ご飯にしようと思い、木の影に座った。
ユナ婆から貰った携帯食料を、少しだけ取り出す。


水筒の中を確認すると、補充しなければならない量だった。
コップに半分程入れて、蓋をする。


ご飯を食べてから川を探そうと地図を広げた。
見ると、この先に大きな湖があった。
ならば大丈夫だろう。










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タイトルは誰かのヒロインに対する気持ち。