06.孤独町壱番地○○様へ











「なっなんでが居るの?!」



「それはこっちの台詞だ。何をやったんだ三谷」



「僕は何もやってない!」



「目撃者が居るんだぞ。
 貴重なドラゴンの子供を誘拐するなど…」



両脇にはハイランダー。
困惑した三谷。
あたしは冷ややかに三谷を見た。



「何やってんだか…
 どうせアンタの事なんだから、騙されたんじゃないの?」



「…どういう事だ



「カッツ…コイツ、三谷は極度のお人よしなんだ。
 きっと犯人の口車に乗ったに違いない。
 そうじゃ無かったとしたら、馬鹿正直に何やってるんだ、
 とか言って濡れ衣を着せられたんじゃないの?」



結局、三谷はブタ箱行き。
ブタ箱と言っても、一歩手前だし。
どっちかって言うと、拘置所みたいな所か。


あたしはカッツに賞金のお礼を言って、ユナ婆の食堂に戻った。
帰って来たあたしを見てユナ婆は、黙って給料を渡した。
餞別かな?と思わせるような携帯食料(ユナ婆作)が入った袋も貰った。


「えっとキ・キーマ、三谷の奴今日は戻れないと思う。
 辛抱して待ってやってくれない?」



、お前さんはどうするんだ?」



「野宿でもして夜を明かすわ。それじゃ」



「待てぃ!おれの馬車で寝るといい。
 ワタルが帰って来るのを待つからな。当分は街から出ないさ」



「………それじゃ、一晩だけ。ありがとう」



「いいって事よ!ワタルの友達なんだから、遠慮するなよ」



友達にはまだ程遠いレベルだと思うけど。
あたしは何も言わずに、荷台に寝転んだ。
小さい身体を更に小さくするように丸めて。










翌日。
容疑者の三谷が牢屋に居るのに、ドラゴンの子供が盗まれたとかで釈放になった。
三谷はハイランダーと一緒に帰って来て、

「戻らず帰らずの洞窟に行く」

と言い出した。



「ねぇ、もついて来てくれないかな?」



「あたしが?どうして」



「だって、僕よりも宝玉多いし、慣れてそうだし……」



「それがどうかした?
 いい、あたしだってアンタだって、願いを叶える為に幻界に来ているの。
 それは分かる?

 だから自分の事は自分で解決なさい。人に頼ってどうなるの」



「そっか……そうだよね。ごめん、我が儘言って」



三谷はしょげながら言った。
そうして、ハイランダーとキ・キーマと一緒に、戻らず帰らずの洞窟に向かった。


あたしも賑やかな場所で情報を得る為に、出ていく準備をし始めた。
必要なものを鞄に詰め込む。
やはり、ユナ婆の携帯食料が容量の大半を占めた。



「それでいいのか?」



「?
 ユナ婆、どういう事?」



「確かに、お前さんたちは願いを叶える為に幻界に来たんだろうから甘えは無用。
 しかしあの水人族には一宿の借りがある」



「貴女も彼等について行け、と?」



「借りはさっさと返した方がいいんじゃないのか?」



借りの利子は何時か膨れ上がる、か。
手を貸す、と言うのは稀に本人に悪影響を及ぼす。
今、あたしが三谷に手を貸すとどう影響が出てくるんだろう。



「それで坊主が甘えちまうんじゃねぇか。はそう思ってんだろう?
 確かに、今手を貸したらそう思うだろうよ」



「分かってんじゃん」



「けれど、助けて助けられて。
 がピンチになった時、坊主がピンチになった時、必ずや良い方向に行くだろうよ。
 ほら、戻らず帰らずの洞窟への地図さ。早く行きな」



ユナ婆は紙切れをあたしに渡した。
大ざっぱな形で、荒く書かれた地図は、ユナ婆が急いで書いてくれたのか。
あたしは見るだけで、紙切れをテーブルの上に置いた。



「ユナ婆、あたし行くから。ありがとう、それじゃあ」



鞄をかけ直して、あたしは店を出た。
ユナ婆が何か言いたげにこっちを見ていたが、知らない振りをして通りに出た。
人込みに紛れて、街を出て行く。


街を出て、丘の上にある廃墟を見上げる。
あまり行きたくないけど、足を廃墟に向けた。










「何やってんの?」



「何者だっ!?」



!」「っ?」



っ、どうして君がっ?」



今回の黒幕であろう人物と、キ・キーマ、三谷、猫みたいな女の子が居た。
キ・キーマは「助かった」みたいな表情をしたが、三谷は暗い表情をした。
あたしは溜め息を一つ吐くと、武器の鉄扇を取り出して開いた。



「何をやっているかなんて、あたしには関係無いけど。
 けれど、あたしはキ・キーマに借りがあるんだよね。寝所の。
 だから、今回だけ、三谷、加勢してあげる」



言い終わると、赤の宝玉の力を使った。
まばゆい位の焔を出す。


あたしには、特殊能力である風を操る力。
そして、宝玉は自然を操る力だった。


露出している肌にチリチリと焔が当たるが、熱くはなかった。
扇を一降りして、焔を玉を形成する。



、その炎は…?」



「………あたしの、宝玉の力。
 いい三谷、現世も幻界も、綺麗事ばかりじゃ無いんだ。
 『どうしてこんな事するの?』
 なんて愚問なんだ」



そう言って、焔を真犯人に向かって投げた。
犯人たちは慌てて逃げる。
湖の中に入って行った。
あたしは追い打ちをかけるかのように風の力を使う。
水の竜巻を作った。










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