04.夢見がちサンシャイン
化け物がギャア!と叫ぶと消えて行った。
そして、化け物の消えた場所から緑の宝玉が出て来た。
「!大丈夫か!?」
芦川があたしの側まで来て、鉄扇を持っている腕を引っ張った。
そして、あたしを抱きしめた。
「あっ、あしかわぁ?」
「声が聞こえて見に行った時は、びっくりしたぞ」
「あ、あたしはこの状況にびっ、くり……」
「わ!悪い!その…これでも被っていろ!戻るぞ」
「心配、してくれたんだ。
…ありがと」
何故か可笑しくて、くすりと笑った。
一歩前を歩く芦川の手を握ると、芦川は顔を赤くした。
芦川に借りたタオルで身体を拭いている間、芦川は朝食の用意をしていた。
芸者の服に着替えて、ちゃんとマントもかける。
「言ってくれれば手伝ったのに、朝ごはん。
あたしそれなりに料理するんだよ?」
「…その……、さっきは悪かったと思う」
「いいよ気にしてないし。見られても減るもんじゃないしさ」
「すまない」
「謝るんなら芦川の裸でも見せる?それでおあいこだよ?」
「なっ!」
「冗談冗談。軽い冗談じゃないの。
誰が好き好んで男の裸が見たいと言うか」
あたしは変態じゃないよ。
そう言いながら、芦川の用意した朝ごはんにかじりつく。
芦川も戸惑いながらも食べ始めた。
話しをしていくと、芦川はこれからガサラという街に行くらしい。
あたしも宝玉の情報を集める為と資金稼ぎに、そのガサラという街に行く事にした。
ガサラ。
この街は、商人の街らしい。
色んな人たちがひしめき合っている。
「それじゃぁ、」
「うん、芦川ありがと。ご飯、美味しかった」
「美鶴。美鶴でいい」
「うん、美鶴。縁があったらまた会おうね」
あたしたちはなんてさっぱりしているんだろう。
もう少し、別れを惜しんでもいいじゃないか。
って仕方無いか。
お互い、淡泊だし。
こうして、あたしたちは素っ気無く別れた。
次の再会がある事を心の奥底で祈って。
あたしは美鶴に背を向けて歩き出す。
先ずは資金稼ぎ、かな。
日雇いのバイトがあったりすると嬉しいんだけど。
だとしたら二、三日はガサラに滞在か。
幸い今朝、二個目の宝玉を手に入れた事だし。
そんなに手のかからない場所にあるのだろう。
そこでふと、目にした賞金首の顔写真と名前の紙。
この世界にもお尋ね者は居るんだ。
よく見てみると、その賞金首は貴重なドラゴンを盗んで売りさばいたりしているそうだ。
他にも、強盗をしたり窃盗をした人…色んな人が手配されていた。
「お嬢さん、この辺も物騒になったもんでねぇ。気をつけなよ」
「おばさん。この、ハイランダーって何ですか?」
「お前さんハイランダーを知らんのかい?」
「あたし、旅人なもんで。
あ、日雇いで雇ってくれるお店、この辺にありませんか?」
「だったらウチにおいで。
久々にいい食材が手に入ったんで開店するんだ。
アタシの名前はユナだ。ユナ婆と呼んどくれ」
「あたしはです。 。よろしくお願いします」
ユナ婆は持っていた食材の一部をあたしに渡す。
先々行ってしまうユナ婆について行きながら、ガサラの街を少しだけ歩いた。
ユナ婆の食堂につくと、ユナ婆は下準備に入った。
あたしもそこら辺の雑巾を借りて、テーブルを拭き始める。
暫く開いていなかったらしくて、机に埃が積もっていた。
机を拭いて終わる頃、お客さんが入って来た。
常連の客だろうか、迷わずカウンターに座った。
「!注文!」
「あ、はいっ。いらっしゃいませ、ご注文は何になさいますか?」
「おっ可愛いね。バイトの子かい?」
「あっはい。一日だけ、雇って貰っています」
「そうかい。それじゃあ、注文。何時ものを頼む」
「分かりました」
こうして、忙しいウエイトレスの仕事が始まったのである。
あたしはくるくると動き回った。
昼前に差し掛かった時の事。
この頃には流石のあたしもウエイトレスの仕事に慣れて。
にこにこと動き回っていた。
すると、水人族と呼ばれる何とも言えない男と、知り合いによく似ている人が店に入って来た。
「此処はユナ婆の食堂だ。うんめぇよ〜、ユナ婆の飯は」
「いらっしゃいませ、こちらのお席にお座り下さい」
「あれ、?どうして君が幻界に……」
「やっぱり…一日振り、三谷。それはこっちも聞きたいよ」
ガサラの食堂で、現世の知り合い二人目と再会した。
三谷も、運命を変えたいのか。
「ワタル、この可愛子ちゃんは?」
「あ、紹介するよ、 さん。君も旅人、なんだよね?」
「初めまして」
「で、キ・キーマ。
幻界に来て直ぐの時、ねじオオカミの群れから助けてくれたんだ」
「初めまして。嬉しいぜ、生きている時に二人の旅人と会えて!」
キ・キーマとやらはあたしの手を取り、上下にぶんぶん揺らす。
奥の方から、ユナ婆のオーダーを催促する咳が聞こえた。
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