終了の、ホイッスルが鳴った。それは、あたしにとって物凄く長く鳴り響いた感じがした。
「くやしい!くやしいくやしい、くやしい!」
あたしは顔が砂まみれになるのも構わずに、涙を拭った。とても、くやしかった。それは、負けた相手が寿也のはじめての野球友達だったから余計にそう思ってしまう。
本田 吾郎は、試合の終了と共にマウンドに崩れ落ちた。「吾郎くん!」と、寿也の焦った声が小さく耳に入った。
「負けを認めろ、」
「でも監督!」
「本田もお前も、百パーセント力を出し切ったんだろう。それで負けたんなら、次がある。真島達六年生はこれで終わりだが、お前には来年がある。それで勝てばいい」
涼子ちゃんに肩を抱かれ、あたしは声を出して泣いた。今までも、野球でくやしかった事は沢山あった。
女だから、と言われて。だから男の子に負けないように努力した。だから、とてもくやしかった。
「来年は勝ってねちゃん!」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を見られないように俯いて、あたしは「うん」と言った。