は鎌倉の公立高校に通う普通の女子高生だった。ただ、ちょっと普通の女の子と違う所は、実家が道場で中学から剣道を嗜み、全国大会まで勝ち上った所だけであろう。(ちなみに彼女の父親が剣道で祖父が空手の道場を持っている。)
この日は、クラスメイトで仲の良い友人に誘われて、クリスマスパーティーに呼ばれていた。初音は毎日の日課である稽古を午前中だけにして、午後から友人宅へお邪魔しようとしていた。
「、いい? ちゃんと可愛い格好をしてくるのよ!?」
「ジーパンじゃ、駄目?」
「だーめ! たまにはスカートも履きなさいよ~」
学校で交わした会話を思い出して、は軽いため息を吐く。彼女は動きやすいカジュアルな服装を好む傾向があると言っても、性格的にスカートを好まない。学校以外は専ら袴で稽古をしているので私服もジーパンを履くことが多いに、彼女の言葉は酷くを重くさせるものだった。。
「望美も面倒な事を言う……」
はそうごちりながら自室に向かう。今からシャワーで汗を流して、着替えるのだ。その服を、は未だ迷っている。
いいじゃないか。ジーパンで。今は冬なんだから、暖かい格好をすればいいじゃないか。どうしてスカートなんて七面倒な物を履かなければならないのだ。どうせジーパンを履いたってブーツインすればそこそこ可愛いんだからいいじゃないか。(ジーパンにブーツインは、どちらかと言うと格好良い部類に入るのだが、この時の彼女の頭にはそれが無かった。)
ぶつぶつ。ぶつぶつ。
は今更どうしようもない事をひたすらごちり続ける。何故、あの時自分は否と答えられなかったのだろう。(理由は簡単。望美の気迫に負けたのだ。)
「(あの時の望美は怖かった……)」
シャワーでさっぱりとしたは、とりあえず動きやすい部屋着に着替えて自室へと向かった。