ターミナルは、静まり返っていた。
もうもうと立ち上る黒煙に、近藤は顔をしかめた。内ポケットから煙草を取り出した土方は、マヨネーズ型のライターで咥えたそれ――煙草――に火をつけた。
「局長ッ! 火の周りが早過ぎます!!!」
先に到着していた山崎が近藤に駆け寄った。土方はそれを聞いて過ぐ様近くの隊士にめ組の応援を呼ぶように怒鳴った。は土方の隣に立ち「突入……しないん、ですか?」「思ったより火が早ェ」
「…………居ます、よ……」
「誰が」
「攘夷、志士。…………捨て駒、に、された…………!!! え……………………この、………………匂い…………………………………………たか、すぎ……っ!!」
近藤や土方達には分からない匂いを嗅ぎ取った(というかこれは彼女の直感だ)が、ターミナルに向かって駆け出した。その瞳は冷たく、氷のようだった。
瓦礫の山を崩しながらターミナル内部に入るを、近藤が「ちゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんんんん」と顔を真っ青にして叫んでいた。
熱気に喉をやられないように、片手で口元を覆った彼女。もう片方の手には拳銃が握られている。足元には逃げ遅れた一般人と捨て駒にされた攘夷志士の死体が転がっている。まだ息のある志士も幾人が居たが、それは彼女の拳銃によって沈められた。
パァン。
ズボン――ショートパンツ――の布に隠れていない、太ももに名も知らない攘夷志士の血が飛び散った。
「……何処……何処、に……居る…………の……? たか、すぎ!」
感情の篭っていない声色で瓦礫を蹴破る。頬を煤まみれにしながら、奥へと、高杉の匂いのする方向へと足を進める。緑のランプ――非常出口――が赤を纏う。天井から落ちてきた壁を避けて通りながら銃弾を放つ。「………………チッ!」煙が充満していく。息が苦しくなる。
「!!!!!
(崩……れ、るッッ!!!)」
バランスを崩して片足を着いた。その時、傍らの壁が大きくぐらついた。潰される。そう思った瞬間、誰かに腕を掴まれた。は大きな瞳を更に大きく見開く。「たかすぎぃッ!!!!!」普段のからは想像も出来ない叫び声が、響き渡った。
脱稿:2008/11/03